幸せに包まれる思いを抱いて、1600km先のゴールに到達した北田雄夫氏
世界7大陸アドベンチャーマラソンを日本人で初走破した〝アドベンチャーランナー〟の北田雄夫(たかお)氏(39)が、新たな挑戦として出場していた「極寒アラスカ1600kmレース(アイディタロッド・トレイル・インビテーショナル)」(2月26日~3月28日/米国アラスカ州)で無事完走を果たした。
レース途中で、自身の撮影を行う北田雄夫氏
マイナス40度にもなる厳冬期のアラスカで、食料や寝袋、サバイバル道具などを積んだ約20kgのソリを曳きながら1600km先のゴールを制限となる30日以内に目指すレース。挑戦が許される選手は、指定された同レースの560km完走に加え、厳冬期のサバイバルスキルが認められた者のみが出場できるため、FOOT部門のほか、バイク、スキー部門含めて参加者は14人で、FOOT部門で出場した北田氏が日本人で唯一出場を果たした。
マイナス40℃~0℃の極寒アラスカの景色は過酷な条件と対照的に美しいもの
レースは、チェックポイントが21カ所(最長で約200km無補給となる)、ドロップバッグが3カ所(200km、360km。750km地点に食料やバッテリーなどが置ける)で、レース後半800kmは大会提供のドロップバッグがなく、選手自らがルート沿いの村に食料などを郵送しながら進み、しかも、コースもルートデータの提供やマークもなく、選手自らがGPSルートを作成・ナビゲートする想像を絶する過酷なレースとなっている。
「凍った海の上を50km進む場面で、夜を超えて見た朝焼けはとても美しかった」と話す北田氏
28日17時間18分という記録で、14人中3位(3人が完走、11人がリタイア)という結果を残した北田氏はレース後に「本気で生きた。人生で初めて、そう思えるチャレンジとなりました。2017年から目標としてきて6年。寒さやウォークが苦手な僕にとって、予選大会を通過することも、ブリザードに立ち向かい続けることも、容易なことではありませんでした。でも、いつも支えてくれる家族や温かい応援者の皆さんのおかげで、チャレンジすることができ、最後まで乗り越え続けることができました。ぜひ、また次のチャレンジに向けてがんばりたいです」と、28日を超すレースを振り返りながら、コメントを寄せてくれた。
北田氏が「雪に足が埋もれて進まない。毎日何十時間も独りで、心を保つのが難しい」と愚痴を零した場面
【北田氏の準備品】
ソリ、寝袋(マイナス40度対応)、スリーピングマット、極地ウェア、予備ウェア、防寒シューズ、オーバーブーツ(靴の上から履く防寒靴)、ストック、スノーシュー、燃料ヒーター、ライター・防水マッチ、衛星通信機、GPS時計、食料(約15万カロリー/30日分)、ヘッドライト、バッテリー、保温ボトル、救急道具、医薬品など)
「マイナス40℃になり、とにかく体温を落とさない様に動き続ける。体温が落ちれば足はちぎれそうなほど痛くなる」と、過酷なレースを身を張っての体験を話す北田氏