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- Vol.1「京都アベンジャーズ」の結集。100年の時を越える「物質」への挑戦。
連載
Vol.1 | 2026.06.04
「京都アベンジャーズ」の結集。
100年の時を越える「物質」への挑戦。

京都・両足院で開催された羽生結弦さん写真展は、報道写真の枠を超えた新たな価値を提供した。禅寺の静寂の中に現れた「物質としての羽生結弦」の数々。フォトグラファー・小海途良幹が捉えた一期一会の表情に様々な伝統技法で魂を吹き込んだ職人たちがいた。単なる写真の展示ではなく「100年、200年先も語り継がれるべき肖像」として京都の最高峰の技術が結集。本連載は京都の文化・芸能を支え続けた「京都アベンジャーズ」たちの想いや制作過程を描いた挑戦のアーカイブとなる。

宿命の1枚と漆黒が共鳴した、Photonプロジェクトの幕開け
両足院の片隅に、圧倒的な存在感を放った一枚の作品が置かれていた。光沢感のある漆塗りに、羽生さんが「MANSAIボレロ × notte stellata」を舞う一瞬が収められている。時の移ろいとともに表情を変える多面性を持つ作品は、京仏具の塗師集団「牧野漆工芸」(京都府宇治市)が手がけた逸品。漆に直接、写真をプリントする難工程を経て出来上がった。
25年2月、プロジェクトの当初案は「和」をテーマにした写真集特装版の企画だった。「そのまま飾れる写真集」をコンセプトに、当初は写真集そのものを収める「漆塗りのフレーム」制作を模索、検討していた。
そこに新たな発想がもたらされた。25年4月。「いっそ漆塗りの板に直接写真をプリントしてはどうか」――。写真集のデザインを務めたアートディレクター・小島利之氏の一言により、漆塗りに関するプロジェクトが新たな展開を見せた。
しかし、様々な伝統技法での試作は、納得のいく仕上がりにはならなかった。制作が頓挫していたところに意外なアイデアがもたらされる。写真展全体の空間デザインを担当したセノグラファー・小西啓睦氏による「両足院での写真展」という空間演出の提案だった。

一度は諦めた「漆黒の夢」。展示作品としての再挑戦。
25年11月、小西氏による展示プランのプレゼンテーションの中に、写真をプリントした漆塗りを展示するプランがあった。「実は写真集で僕たちもそれをやろうとしたんです。でも上手くいかなくて諦めてしまったのです」と小海途。実現可能性も高く、新たな挑戦を決断。写真展の展示作品として漆塗りに印刷するUVインクジェット印刷という手法を用い、芸術的な純度が一気に高められる確信を得た。

「両足院」「漆」。2つのキーワードが結びつき、小海途のインスピレーションは「青い光を纏う肖像」だった。この挑戦の象徴として選んだのは、和の空間と漆黒に最も深く共鳴する「宿命の1枚」とも言える写真だった。
小海途は振り返る。「実は、この写真はPhotonプロジェクトのグループチャットのアイコンにしていたくらい愛着を持っていた一枚。このプロジェクトの象徴となる写真だと思っていました。青のワントーンが漆黒に映えると思いましたし、漆の光沢感と衣装の光沢感が美しく融合する様子も目に浮かびました。何より、荘厳で仏画にも見える羽生さんの肖像が、両足院の空間に見事に調和するという確信がありました」。作品が決まり、いよいよ制作過程へ。命運を託されたのが「牧野漆工芸」だった。
緻密な工程を積み重ね、数カ月を要した技術で、光を「吸収」する深い黒で神々しい奥行きを表現した。鏡のような黒を作り出した「手」の物語とは?職人たちがこだわった機微を少しずつめくっていく。
Text 大和 弘明
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