吉本興業のお笑いコンビ「官兵衛」の伊藤貴之が狙ったのは相模湾のアマダイ。初挑戦だったが、そこにはあるミッションがあった。
何を隠そう私・イトー、釣行する2日前に開催された「バリバスカップ・アマダイ釣り大会」に選手として参加のはずが体調不良で出場できなかったのです。
「リベンジ行ってきてよ」とスポニチの釣り担当デスク。「大会優勝者は46センチだったからそれよりデカいのねー!」と気軽に言われ、取材へ!
178人が大会に参加して場が叩かれた直後のタイミング。さらに初めての釣り物だ。でも、平塚・庄三郎丸に乗船するやいなや望月幸雄船長がめちゃくちゃ丁寧に仕掛けや誘い方の説明をしてくれて、不安が一気にワクワクに変わりました!
水深80~110メートル。60号を着底させたら1メートル巻き上げる。ここからさらに0・5~1メートルの幅で竿をあおり、誘いを入れる。小まめにタナを取り直して繰り返す。餌はオキアミ。尾羽をハサミで切り、エビが真っすぐになるよう付ける。
「ようしやってやる!とにかくまずは1匹目を」とタナを取った直後に小さな当たり。合わせるも乗らず。2回それが続き、巻き上げるともう餌がない。恐らく小さな餌取りの仕業。悪戦苦闘していると、隣で釣っていた女性客がサラッと何かを釣り上げた。良型のサバだ。
「アレでも良いから釣りたいな」と思いながらタナを取っていると、先ほどのセコい当たりとは違う分かりやすいアタック!即座に竿先を立て手巻きする。5メートルほど巻いてから、電動リールで一気に巻き上げる。その際もグググッと心地よく引いてくれる。上がってきた人生初のアマダイは25センチで船中1号。
「初の釣りやけど、さすが俺!のみ込み早いし、やっぱセンスあるな!」と心の中で自画自賛して優越感に浸って魚を次々追加。ただ、どれも小さい。僕より良型のサイズを立て続けに釣っていた隣のサバの女性が、そんな僕を見かねて声を掛けてくれた。
「日によっても違うんだけど、誘いを頻繁にすると比較的小さいのが多くて、誘いを減らすと大きいのが掛かることがあるんです」
早速、アドバイス通り実行。すると4匹目、5匹目とだんだんサイズが上がってきた。27センチ、32センチ。この女性何者?と話を聞いていくと、東京・神田の「米俵吟蔵」というかっぽう居酒屋の女将だったのです。自らが釣った魚を振る舞うスタイルのお店なので、週1、2回のペースで庄三郎丸に乗船しているのだとか。
とんでもない名人に教えてもらってたんや、と思っているとガツン!竿先に今までにない大きな当たり。竿を立てて合わせる。グググ…乗った!手巻きで勝負。ゴンゴンゴンと下に叩くようなまるでマダイのような引きだ。上がってきたのはカンヌキにばっちりハリが掛かった大型のアマダイ。測ってみると49センチ、1・9キロ。大会の優勝魚46センチを本当に超えてしまったのです。
スポニチに連絡を入れると、「優勝じゃん。2日前なら!」。
出来過ぎた結果に運を使い果たした気がするので、帰りの車で死なないようにめちゃくちゃゆっくり運転して帰りました。
◇伊藤 貴之(いとう・たかゆき)1986年(昭61)生まれ、岐阜県出身。18年に石橋俊春とお笑いコンビ「官兵衛」を結成しデビュー。
スポニチ 2022年12月6日