唯一の釣果は空から!?

カモメが落とした フグのミイラ

 

 神奈川県小網代・丸十丸で3日に開催されたバリバスカップ2022「小網代沖スーパーライトジギング(SLJ)大会」。選手として参加したのは吉本興業のお笑いコンビ「官兵衛」の伊藤貴之。得意のルアー釣りで釣り上げたのは…。

 

ルアーを家に忘れた・・・

 

 昨年も同大会に参加して、苦汁、いや苦渋(釣果が渋い)をなめさせられていました。前回、僕と同じように渋汁をなめた男がもう一人。釣り仲間の宮内和也さんもリベンジに燃え参戦です。

 

 海もナギで、20度と11月らしからぬ暖かい陽気でした。

 

 最初のポイントまでの移動中、情報交換。自分の今回持ってきたメタルジグをひけらかす時間です。

 

 宮内さんが「今回秘策があるのよ」とカマしてきました。

 

 「タイラバに使うヒラヒラのネクタイ付きのフックを、メタルジグにカスタムしようと思ってんのよ!」と。

 

 なるほど。コレは一本取られた。

 

 メタルジグの誘いで釣れない時にただ巻きをしたら、タイラバのような誘いに変化して釣れる可能性が広がる。

 「どーしてもとお願いするなら使わせてやってもイイけどね?」と勝ち誇った顔で条件を提示してきた宮内さんの頭上のスピーカーから、船内アナウンスでスポニチスタッフからのルール説明があり「メタルジグ専用のフックのみ使用可能です。カスタムしたフックは使用禁止ですのでお気をつけください!」とのお達しが。

 

 「え?うそ?使ったらダメなの?昨日買ってきて用意したのに!」

 

 あれだけ新兵器でマウントを取ってきてたのに、使用禁止とあっちゃあ意味がない。

 

 次はコチラのターン。

 

 「前回優勝者も使ってたTGベイトを昨日釣具店に行って3本買ってきたで!」。タングステンという高級素材を使っているため、
一つが2000円前後もするTGベイトというメタルジグ。その高価なルアーを3つも追加。コレでライバルに差をつける。

 

 「貸してあげないですからね!」と嫌みを言って「どんな色の買ってきたの?」と聞かれたので実物を見せようと自分のBOXをあさります。

 

 「ん?あれ?ん?」

 

 嫌な予感。「うわうわ最悪!家に忘れてきた」とうろたえるイトーを見て、いい気味だと笑い転げる宮内さん。

 

 2人ともマイナスからのスタート。

 

竿ではなく頭にヒット

 

筆者の〝釣果〟はカモメがプレゼントしてくれたフグのミイラ

 

 ここから過酷な一日が始まった。全く釣れない。周りも誰も釣れない。まれに釣れてもエソ。フグ。ポイント対象外の魚や、対象サイズに満たない魚ばかり。そんな中、隣席の宮内さんのリールから糸が出る。ジジジー!

 

「キタキタ!お、見えた。茶色いぞ」。何と釣れたのは32センチのオオモンハタ。

 

 大会の規定で、ハタ類は30センチ以上からポイント対象ということで見事条件クリア。お見事!40ポイント獲得。ヒットルアーを聞いたら、ちょうど僕が家に忘れてきた重さのTGベイトでした。

 

 そこからまた静かになる船内。何時間たっただろうか。「キタキター!」。また宮内の野郎がHIT!気持ち良く曲がる竿。上がってきたのは真っ赤なアカハタ。しかも30センチ以上で規定クリア。40ポイント獲得。この時点でノーヒットどころかノーバイトのイトー。

 

 終了間際に焦っていると「コツっ!」。竿ではなく頭に何かが当たった!ポトっ。

 

 落ちた物を拾うと、何とカリカリになったフグのミイラでした。。頭上を見上げると1羽のカモメが飛んでいました。

 

 コイツがいらなくなったフグのミイラを落としてきたのです。

 

 この日の僕の釣果はこのフグミイラだけでした。一方の宮内さんが、この大会の総合優勝で最高の結果となりました。

 

筆者の隣席で釣っていた宮内さんが総合優勝

 

 

 ◇伊藤 貴之(いとう・たかゆき)1986年(昭61)生まれ、岐阜県出身。18年に石橋俊春とお笑いコンビ「官兵衛」を結成しデビュー。

 

スポニチ 2022年11月15日