吉本興業のお笑いコンビ「官兵衛」の伊藤貴之が、最も自信があると胸を張るのがショウサイフグのカットウ釣り。大尊敬する「長老」に誘われ、千葉県飯岡の隆正丸へ向かったが、またも“大事なこと”を忘れていたようで…。
6年前にこの連載が始まり、数々の釣りに挑戦してきましたが、今回の釣りが一番自信があります。ショウサイフグのカットウ釣り。そう、あの繊細な当たりを取り、カットウバリでフグを掛けていくあの釣りです。
と、自分でこの説明を書いていても、一番ハリが大事なのは分かっていたのですが…。
向かったのは初めてお邪魔する千葉県飯岡の隆正丸。以前から親交のある同宿の元船長で、東日本釣宿連合会の元幹事長・芳野隆さん(92歳で、勝手に「長老」と呼んでいる)から留守電に「ぉお~おい官兵衛~良型の、フグが上がっとるから、は早く、釣りに来なさい」と言っていたため、居ても立ってもいられなくなり飯岡へ急行。
連日の好釣果もあり船は大盛況の満船。船頭は長老のお孫さんで、僕と同い年の“イトー世代”芳野幹雄船長。面識があるため、コミュニケーションも取りやすく、いろいろと情報を聞いていく。
港からポイントが約15分の激近で、水深も20メートル前後。着くやいなや釣りを始めると、すぐにガツンという強めの当たり。思いっきり掛ける。
だが、しばらく動かない。根掛かり?と一瞬疑うほどの重量感。そこからビクビク魚らしい反応があり、重いながら懸命に巻いていく。上がってきたのは38センチの大型ショウサイフグ。船中ファーストヒットで大物ゲット。

そこから立て続けに5匹釣り、周りの常連さんもザワつきだす始末。でも、鼻高々で糸を垂らしてたら、ここから3時間パッタリ釣れなくなった。当たっても乗らない。スカ、スカ。乗ってもバレる。グングン、スカ。あれあれ?船長も心配そうに見守る中、周りはドンドン釣れていく。イトーのスコアは「5」で止まったまま。
ふと隣のおっちゃんを見ると、何やらヤスリのようなものでハリを研いでいる。ん?あ。あー!自分のハリに目を落とすと、大型を掛け過ぎたせいで先が全てナメっていた。そら釣れませんやん。そらバレますやん。遅すぎるが気付けて良かった。ハリを新しいチョンチョンのとがった物に替え、ラスト1時間イトーの逆襲劇が始まる。誰かにやられたわけではないけど。
掛かるわ掛かる。面白いように釣れていく。凍りついた「5」のスコアが動き出し、6、7と伸びていき最終的に12匹でフィニッシュ。なんだかんだで最初に釣った38センチが、この日の船中最大サイズで、何とか面目つぶれずに済みました。

港では長老がお出迎え。今回のことを話すと「そら、ハリが一番大事だろ。うまいヤツはしょっちゅうハリ替えるぞ」と至極当然という顔で言われてしまいました。長老~次はその大事なことも留守電に入れといて~。
今まで釣っていたものより良型がそろっていたので、ハリ先をよりシビアに管理していないとダメだったみたいです。また一つレベルが上がりました。ポジティブ(笑い)。

▼釣況 東日本釣宿連合会所属、飯岡・隆正丸=(電)0479(57)5432。集合時間は午前4時、乗合料金は氷付きで1万円。女性・中学生以下8000円。餌別。
◇伊藤 貴之(いとう・たかゆき)1986年(昭61)生まれ、岐阜県出身。18年に石橋俊春と「官兵衛」を結成しデビュー。ANGLERS公認「アングラーズマイスター」。
スポニチ2025年5月24日