躍動の時だ。兵庫県内に本拠地を置くプロバスケットボールチームのB2リーグ・神戸ストークスは、26年のBリーグプレミア参入前の有終の美を飾るべく、B2制覇を狙うシーズンが10月に開幕する。バレーボールの新生SVリーグで昨季レギュラーシーズン6位となりチャンピオンシップ出場を果たしたヴィクトリーナ姫路は、10月開幕の2025―26シーズンで初優勝を目指す。3人制バスケットボールのプロチーム、EPIC.EXEは今月27、28日に行われる「3X3.EXE PREMIER 2025」のプレーオフ制覇に挑む。

〝B2ラストイヤー〟は意地を示したい。26年にスタートするBリーグプレミア参入が決定している神戸ストークスは、この2年の成績が西地区5位、同6位とプレーオフ出場さえできなかった。
「(チームからの誘いで)B2で優勝するんだ、プレミアに行って3年後に日本一を獲るんだという熱意に心が動いた部分はありました。自分自身も日本一のヘッドコーチになりたい夢があって、神戸でやれる、関西でやれるところが本当に一番大きかった」

新ヘッドコーチに就任した川辺泰三氏は指導者になって以降、ファイティングイーグルス名古屋一筋で8シーズンを過ごしてきた。ただ、甲南高、甲南大時代を過ごした神戸のチームを率いて最後のB2、そしてBリーグプレミア元年を迎える決断をして関西に戻ってきた。
B1の群馬クレインサンダーズから移籍してきた八村阿蓮も「来年のプレミア移行を見越したシーズンにはなるけれど、今季はB2で優勝するというのは絶対条件」と、弾みをつけたい思いは強い。B1強豪チームからB2チームへの移籍は「やはりジーライオンアリーナの存在は大きかった。バスケをするにおいて、いい環境でやりたい思いが一番にあったので選択肢の中でストークスの環境が一番よかった」と、決断した。八村の魅力は、フィジカルを生かしたディフェンスだ。川辺ヘッドコーチが「得点力が加われば日本代表になれる」と評価するほどポテンシャルは高い。八村本人は「ドライブからの状況判断でそのまま打てる時は行った方がいいし、インサイドに大きな選手がいるので、そこでステップしてシュートするのか、オープンの人にパスを出すのかの判断はまだまだ甘いところがある」という自己分析のもと、次のステップを模索している。

◇八村 阿蓮(はちむら・あれん)1999年(平11)12月20日生まれ、富山県出身の25歳。小学校時代は野球、陸上、水球を経験。中学1年から本格的にバスケットボールを始め、明成高1年時にU―16日本代表に初選出。高校時代は17年の選抜優勝大会で優勝し、大会MVPに選ばれた。東海大では18、20年に全日本大学選手権で優勝、20年にサンロッカーズ渋谷に特別指定選手として加入した。21年に群馬クレインサンダーズに特別指定選手として加入し、22年に正式契約。25年オフに神戸ストークスに移籍した。兄・塁はNBAロサンゼルス・レーカーズに所属。1㍍98、98㌔。スモールフォワード。

○…八村の移籍材料にもなったジーライオンアリーナ神戸は、今年4月に開業。神戸ストークスは、こけら落としとなったB2の山形戦を含む4試合を行った。4月20日の鹿児島戦は入場者数が1万人を突破。日本初の270度海に囲まれたアリーナは、神戸中心街へのアクセスも抜群なだけに注目スポットになりそうだ。


ヴィクトリーナ姫路は、昨シーズンのSVリーグ初年度にレギュラーシーズン6位でチャンピオンシップ出場を果たした。2年前に就任したアヴィタル・セリンジャー監督の下、毎年大きな変貌を遂げ着実にステップアップしてきたチームは、さらなる高みを目指して2025―26シーズン開幕に挑む。

今季は新たに6選手が加わった(うち秋本と足立はレンタル移籍)。日本代表でパリ五輪にも出場した井上愛里沙の現役引退などで昨季から半数以上が入れ替わった。
ポジション的に少なくなったアウトサイドヒッター(OH)の補強で、今年4月に日本代表登録メンバーに初選出された野中瑠衣が新戦力として加入。「自分が一番求めていることだったり、やりたいポジションだったり、環境が備わっていたので是非このチームでやりたいなと思って(移籍を)決めました。さらなるレベルアップのため自分にプレッシャーをかけたい」
粘り強いレシーブとバックアタックの精度が高い、攻守両面で活躍が期待される万能型のスパイカーは、明るいキャラクターでもあることから活躍すれば人気を集めそうだ。 10月10日の開幕戦の相手は昨季女王の大阪マーヴェラス。佐々木千紘主将は「一番最初に対戦しますが、すごく楽しみにしています」と、今季を占う試金石の一戦に燃えている。19年12月の入団内定発表からヴィクトリーナ姫路一筋。Vリーグでの下位争いから2部降格、そして現在の発展期をチームとともに歩んできた佐々木が、新時代に向かうヴィクトリーナを引っ張っていく。

◇野中 瑠衣(のなか・るい)2001年(平13)8月3日生まれ、秋田県出身の24歳。小学3年の時にバレーボールを始め、秋田北高から日立リヴァーレ(現Astemoリヴァーレ茨城)へ。25年4月、日本代表登録メンバーに初選出。5月にチームを退団後に自由交渉選手として公示され、7月にヴィクトリーナ姫路入団が発表された。1㍍77、67㌔。アウトサイドヒッター。

◇佐々木 千紘(ささき・ちひろ)1997年(平9)11月17日生まれ、秋田県出身の27歳。中学1年の時にバレーボールを始め、角館高、東女体大を経て19年12月にヴィクトリーナ姫路への入団内定が発表された。22年、日本代表に選出されAVCカップに出場。1㍍75、67㌔。ミドルブロッカー。

○…3年目を迎えるセリンジャー監督は、チームの進化を実感している。「常に個々が、チームが、ベストを尽くすということを言い続けてきた。その結果、昨季は個人成績、チーム成績の両方で記録を塗り替えられたし、創部以来の悲願だった皇后杯優勝も果たすことができた」。選手の半数以上が入れ替わった新体制で、攻撃の中心となるのが野中だ。今オフはレフトにも挑戦しており「エースになる可能性を秘めている」という。主将の佐々木については「守備がいい選手なので、ミドルブロッカーとして、より一層成長してほしい」と、攻守での活躍を期待している。



「EPIC.EXE(エピック・エグゼ)」は2月の全日本選手権で2位に入り、8月に行われた「3X3.EXE PREMIER 2025 ROUND7」までの成績でプレーオフ進出ライン突破を決めた。プレーオフは、今月27、28日にグラングリーン大阪内の「ロートハートスクエアうめきた」で開催される。

7月にフリオ・デ・アシスが契約条項違反で契約解除されるアクシデントはあったが、2年連続のプレーオフ進出で昨季のベスト以上を狙う。プレーオフで期待されているのが入団4年目の重本和毅だ。昨季は右肩脱臼の手術を受けた影響でプレーできなかった。重本は「まだ完全な状態ではないですが、プレーはできます。プレーオフファイナルで優勝を狙っています」と、大舞台での一発を誓った。

チームオーナーの岸田大佑氏は「今季は順調に来ていましたが、ポイントゲッターの外国人が抜けたのは…。重本は日本人離れしたプレーヤーだけど、まだ本調子ではない」と、不安を漏らしながらも「今年はプレーオフ2日目まで頑張りたい」と、上位進出に期待を寄せている。
◇重本 和毅(しげもと・かずき)1995年(平7)3月31日生まれ、大阪府出身の30歳。中学からバスケットボールを始め、枚方なぎさ高、大経大を経て、日本社会人バスケットボール連盟の地域リーグで戦う実業団チーム・東レ愛媛でプレー。2022年にEPIC.EXEに入団した。今年3月と5月には日本代表強化合宿に参加した。1㍍92、88㌔。
