柏原 大会史上最大6差逆転

優勝カップを手に笑顔の柏原

4位から出た柏原明日架(23=富士通)がボギーなしの6バーディー、66をマーク、通算14アンダーの274でツアー2勝目を挙げた。9月に苦節6年でツアー初優勝し、素質が開花。賞金ランク上位がそろうビッグトーナメントで、09年・申ジエの5差を超える大会史上最大となる6打差を逆転した。賞金ランクも9位に上昇。地元で行われる最終戦のツアー選手権リコー杯(11月28日開幕、宮崎CC)で初メジャー制覇に挑む。

9番、第3打を放つ

17番で単独首位に

涙の初Vからわずか28日。柏原は優勝者にだけ味わえる特別な世界に再びたどり着いた。「優勝してから苦しい時期もあったからこそ、前回より物凄くいい景色だった」。初優勝までには6年かかった。その呪縛から解き放たれると周囲の期待も高まり、欲も出た。予選落ちも経験し、ホステスプロとして臨んだ先週の富士通レディースは23位。精神的にも不安定になる中で、大きな勝利を手にした。
首位のテレサ・ルーを6打差追ってスタート。最初の4ホールで3つ伸ばして、先行集団に迫る。パー5の15番でリーダーボードを見ると首位のイ・ボミと1差に迫っていた。「2打差と思っていたので少し気が楽になった」。この日一番のティーショットでピンまで残り200ヤードにつけると、7Wの第2打でピン左横に10メートルに乗せる。2パットのバーディーで首位に並ぶと、17番では2メートルを沈めて単独首位に立ち、逃げ切った。フェアウエーキープ率こそ4日間で最低の50%だったが、抜群のリカバリーで何度も危機を脱出。パット数24とグリーン上でもさえを見せた。

延田久弐生会長から優勝小切手を受け取る

父の厳しさに奮起

大会前、コーチでもある父・武道さんと優勝後初めて再会。23日の練習でハーフをラウンドしたが父は厳しかった。優勝を報告したのに無反応。「逆に見返してやろうと思いました。今思えば、愛情の裏返しかもしれませんが」と感謝の思いを口にする。
優勝賞金3600万円を加え、ランキングでも9位に浮上。目標の一つにしている地元開催の最終戦、ツアー選手権リコー杯での初メジャー制覇に弾みをつけた。ジュニア時代には世界を制した大器がついに本格化。「トップ選手が集まる大会で、私自身も勝ちたいと思っていた。いい景色をもっと味わいたいと思う」と語る表情はどこまでも自信に満ちあふれていた。

14年プロテスト合格 柏原 明日架かしわばら・あすか)1996年(平8)1月30日生まれ、宮崎県宮崎市出身の23歳。父の勧めで7歳からゴルフを始める。中学3年でスポニチ主催の全国中学校選手権春季大会で優勝。14歳で出場した日本女子アマ2位など注目を集めた。14年にプロテスト合格(86期生)。15年には3度のトップ10入りで賞金ランク50位で初のシードを獲得。今年9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子でツアー初優勝。1メートル71、63キロ。家族は両親と弟。趣味は写真を撮ること。

情報に頼らず釣ら向いた「攻め」のゴルフ

ゴルフ担当・黒田 健司郎 決勝ラウンドの2日間はボギーなしの10バーディーで大まくりV。柏原のリスクを恐れずピンを狙っていく姿勢が猛チャージを呼んだ。以前はコースの情報が掲載されているヤーデージブックに詳細なデータを書き足していたという。グリーンでは安全策を取ることを優先して、そのヤーデージブックの情報に頼り過ぎていた。だが、せっかくのスケールの大きさが台なしになるという理由から、この日バッグを担いだ佐々木裕史キャディーは、去年から情報に頼ることを制したという。その成果もあって「攻め」のゴルフを貫徹。この1カ月で2勝。1メートル71の大器に小細工は似合わない。

勝者のクラブ ▼1W=キャロウェイ・エピックフラッシュ サブゼロ(ロフト角10・5度、シャフトの長さ45・75インチ、硬さS)▼4、7、9、11W=キャロウェイ・ローグ(17、21、23、25度)▼6I~PW=キャロウェイ・エイペックス▼ウエッジ=キャロウェイ・マックダディー フォージド(48、52、56度)▼パター=オデッセイ・オーワークス 2ボール(マレット型)▼ボール=キャロウェイ・クロムソフトX
スポーツニッポン新聞社・河野俊史社長からパールネックレスを受け取る
スポーツニッポン新聞社賞 優勝した柏原明日架選手に、大会名誉会長・河野俊史スポーツニッポン新聞社代表取締役社長からスポーツニッポン新聞社賞(パールネックレス)が贈られた。
御礼 24日から開催しました「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」は盛況のうちに終了いたしました。ギャラリーの皆さまのご声援、ご協力と会場をご提供いただいたマスターズゴルフ倶楽部、共催の延田グループ、IMGはじめ関係各位に対し、厚く御礼申し上げます。
スポーツニッポン新聞社
▽主催
延田グループ、スポーツニッポン新聞社、IMG
▽公認
日本女子プロゴルフ協会
▽後援
日本ゴルフ協会
▽協力
マスターズゴルフ倶楽部
▽競技運営
グレイスミヤタ

 

2位やりきった ボミ涙なし

最終18番でバーディーパットを外し肩を落とすイ・ボミ

5差スタート 一時単独首位

涙はない。イ・ボミはやりきったというすがすがしい表情で、18番グリーンを後にした。逆転での復活優勝を目指したが、わずかに1打及ばず。だが、ギャラリーからの大歓声がその健闘を物語っていた。
「今日は楽しく回れました。スコアも良かったし。プレッシャーの中で16、17、18番といいショットが打てた。成長できたかな、と思います」

1番をパーセーブし笑顔

ノーボギー(68)完全復活目前

最終日最終組で首位と5打差からスタート。7番で15メートルのチャンスを沈め「流れが良くなった」。10番からは圧巻の3連続バーディーで通算13アンダーとし、ここで単独首位に立った。だが、柏原が通算14アンダーまで伸ばし、2位に後退。1打差を追う展開で迎えた最終18番では、入ればプレーオフという10メートルの下りのバーディーパットを「強めに」と打ち切った。オーバーして優勝を逃したが「今日ボギーを打たなかったのは本当にいいプレー」と胸を張った。
ホステスプロとして臨んだ大会。今朝、自身が掲載された新聞を見て思った。「私がとても大きく載っていて、本当にうれしかった。“いいプレーをするぞ”って頑張りました」。自身が不振に陥った時にも、変わらず支えてくれたスポンサーに心から感謝している。昨年大会は予選落ちし、涙を流した。今年こそはいい結果を届けたい――。その一心で戦い抜いた4日間だった。
2位は最後に優勝した17年CATレディース以来の最高成績。「パットの部分で集中できなくてミスがあった」と今後の課題を挙げたが、確かな手応えもつかんだ。復活優勝へは、あと一歩だ。

渋野 賞金女王後退に「本当にポンコツ」

6番、ギャラリーの声援に手を振る渋野

伸ばせず12位自虐

首位と8打差の9位から追い上げを期した渋野だが、イーブンパーの72と伸ばせず通算6アンダーの12位。「今日も1つも伸ばせなかったし情けない。本当にポンコツですね」と悔しさをにじませた。
パーオン率は約89%。ショットは好調だったが、グリーン上でチャンスを決められず、「本当に全然入らなかった」。今大会の賞金は国内最高の2億円。賞金ランク2位の渋野にとって上位進出が必須だったが「そう思えば思うほど成績が出ない」とポツリ。さらに「自分には賞金女王は早いし、そのレベルに達していないのに、言うのは失礼かなって」と珍しく弱気発言も出たが、すぐに「でも目標は高くしないと。賞金女王目指して頑張ります」と自らを奮い立たせた。
次週は優勝した全英女子オープン以来の米ツアーとなる、スウィンギングスカート台湾選手権(31日開幕)に参戦する。「自分の実力でどれくらいの成績が出せるのか。10位以内を目指して頑張ります」と意気込んだ。

申ジエ8位も こちらは前進 ○…賞金ランクトップの申ジエも72と伸ばせず、通算8アンダーの8位。「自分のプレーは残念。まだ練習が足りないですね」と反省を口にした。一方、賞金女王を争う同ランク2位の渋野より上位で終えたことで、大会前の約600万円から約800万円に差を広げた。「(自分に)何が足りないかは分かっている。賞金女王に向けて、さらに頑張りたい」と力を込めた。

16番、ティーショットを放つ小祝

小祝「新鮮」3位 ○…6位から小祝が67と伸ばし、通算12アンダーの3位に入った。約2カ月ぶりのトップ10フィニッシュで「久しぶりのトップ10で凄く新鮮な感じ。でも、初日と2日目にいいプレーができずもったいないかなと思います」と振り返った。第1Rは49位、第2Rは28位と出遅れるも、決勝Rで巻き返しに成功。「ショットが良くない中でスコアが出たというのは良かったかな」と手応えをつかんだ様子だった。

萌寧また惜敗… ○…3打差2位から出た稲見は71と伸ばしきれず、通算12アンダーの3位で大会を終えた。2番パー4でフェアウエーからの第2打をグリーンに乗せられずボギーを先行させるなど「ショットがあまり良くなくてチャンスにつかなかった」。前週の2位に続く優勝争いの末の惜敗。「攻めきれなかった悔しさが大きいです」と次戦に2週間分の悔しさをぶつけるつもりだ。

ミレニアム世代 安田ベストアマ

○…“ミレニアム世代”の安田=写真=は前半の16番で13メートルのバーディーパットを沈めるなど3バーディー、1ボギーの70で回り、通算2アンダーの26位でベストアマを獲得した。「3日間、ショットが全然良くなくて不安でしたが、久しぶりにいいプレーができたと思います」。パーオンを逃したのは折り返しの1番だけ。9日後に控えた最終プロテストに向け、調子は上向きだ。

 

 

大会期間中 関係者に選手の“暴言” 小林会長謝罪 日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長が27日、兵庫県のマスターズGCで会見し、マスターズGCレディースの大会期間中に、出場選手が大会関係者に不適切な発言をしたとし、関係者に謝罪したことを明かした。同会長は「事実関係を確認する段階」とした上で、「あってはならない不適切な発言があったのは事実。大変申し訳ないとおわびをしました」と神妙な表情を浮かべた。一部報道によるとラウンド前にストレッチなどで利用する風呂場にタオルがなかったことに腹を立てたベテラン選手が、対応に当たったコース関係者に暴言を吐いたという。

<10月28日付 スポニチ紙面掲載記事>